01.
人は皆この世に裸で生まれ裸で死んで行くと、言われている。しかしこの写真集の作者(1999年 5月に他界したグラフィックデザイナー Tibor Kalman と 妻であり良きパートナーであった作家の Maira Kalman)は別の感慨を持っているようである。つまり生まれて死ぬまで、人は装って装って装い尽くすのだと言うのである。そうした彼等の思いが、頁を繰る毎に怒涛のように襲い掛かるのである。よくぞ集めたりと驚嘆させられる全世界に及ぶ人々の装う写真に、笑い、共感し、「そうかそうかそうなのか」と、彼らのセンスに打ちのめされ、一人一人を抱きしめたくなる。WORK
と題する章の初めの写真(二人の煙突掃除人を撮ったもの)まで来て、私は胸がつまりやがて涙を流していた。それは彼らの着ている煤に汚れた黒い作業着が、どんな著名なオウトクチュールのデザイナーの作品より美しかったからである。つまりしがない庶民のしがない暮らしが一番美しいのだと、作者が主張していることが理解できたからである。缶詰の空き缶が、ブレスレットになることを知っていましたか?コテカは私たちが穿くブリーフやトランクスと同じであることを素直に認めることができますか?ホームレスの抱えるガラクタが実は貴重な財産であると同時に、ファションであることを、心底肯定できますか?様々な新しい発見に酔いしれるために、これから先、何度も頁を繰ることになるだろうと思うのである。
02.
故Tibor Kalman、稀代のデザイナーが見る鮮明にして力強いメッセージが凝縮されています。 写真という、撮影者の感性以外の何者の介在も許さない方法で、人、非日常、個性、そして人生といった複雑なメッセージを、彼は見事にデザインとして表現しています。 0.1ミリの誤差に試行錯誤を繰り返す日々を送るデザイナーにとって、デザインの本質とその力を改めて考えさせる、1ページ1ページが新鮮な本です。テーマごとに分けられてはいますが、 ある種のメッセージを表現したいが為にその方法としての被写体を追い求めたというよりは、旅行を通して自らが出会った絵を後から整理したという印象を受けます。 しかしながら、ただの旅行記とは違う、人や物が放つ力強いメッセージをそのまま写真として取り込んでしまう、Kalman氏のデザイナーとしての高い観察力に圧倒されてしまいました。 人は何故服飾をまとい、 民族は何故その価値観を衣装に反映させるのか。 そんな大きな疑問を解こうというのではなく、ただその服飾と人物が織り成すメッセージを受け取って欲しい。 そんな意図があるように思えてなりません。 我々の非日常と、他人の日常、人生や個性に対して様々な想像力を刺激してくれます。 デザイナーにとって「大きな深呼吸」 と呼べる本のように思えます。 時折ここに戻っては、自分の見るもの、他人の見るものを再確認させてくれる、不思議な居心地の良さを体験させてくれる本です。
03.
行きつけの美容室に置いてあって、連れを持っている間に手に取ったらやめられなくて全部読みきって(見きって?)しまったのに、さらに購入してしまったというくらい、気に入った作品。既成概念を揺さぶられる、というか。 私たちの周りとちょっと違う、ぱっと見、奇抜な人もいるけれど、逆から私たちを見たときに感じる感覚も同じだろう、と思わされる。 「ファッション」を意識している被写体も、ただ当たり前に、以前から「そこ」にあったものを身に付けている被写体も。世界にはこんなかっこをしている人もいるのかー、「ファッション」ってわからんなーってかんじです。 世界中の「ファッション」を切り取った写真集だけど、タイトルには「(un)」がついてるし、「死」や「誕生(あるいは生まれ変わり)」というキャプションのついた写真もあるし、「ファッション」の写真集であって「ファッション」の写真集でないような、写真集です。
04.
え、なに!? がぎっしりつまった一冊です。 被写体はすべて人。人が活動している『熱』をすごく感じます。疲れたとき、落ち込んだとき、うれしときも、この写真集を眺めると、『なんか、いいじゃん。』と、かなりのごきげんな気分。とてもおすすめです!!!
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