01.
武満徹の素晴らしい《うた》の数々。石川セリの個性が、服部隆之、コシミハル、羽田健太郎、小林靖宏、佐藤允彦等のアレンジによって、輝いています。
武満徹は、このCDの制作にあたり、ライナーノーツで「石川セリの昔のアルバムを聴いて、書き溜めて来た小さな歌を彼女に歌ってもらって」ほしいと希望していたそうで、それがこのアルバムで実現したことに対するお礼が述べられています。
石川セリの夫である井上陽水も喜んでいるだろう、という感想もあり、それくらいの完成度と感性で持って歌われたアルバムでしょう。彼女のアンニュイな歌唱が、また一味違った武満像を見せてくれます。
武満徹のこれらの作品は、メロディもいいですが、彼自身の詩がいいですね。「小さな空」に代表されるように、遠い日の子供の頃に見た情景を思い浮かべながら、慈しむように大切に作られた小品群だと感じます。
ロマンチストである武満の性格が、歌詞の随所にうかがえます。流れるようなメロディで、懐かしく、少し淋しげな旋律を持っています。子供の頃に、真っ暗になるまで遊んだ幼いあの日の情景が目に浮かぶような曲です。
「島へ」「翼」などの珠玉の小品群を聴いていますと「ノヴェンバー・ステップス」のような時代を切り開いた現代音楽とは違い、肩の力を抜いて聴くことが出来ます。彼が音楽の道に入る切っ掛けとなったのがシャンソンだったという有名な話を聞くと「さもありなん」と頷けますので。
02.
豊潤な汚れなき旋律をシルクの声が歌う・・・。 武満徹と石川セリの幸福な出会いが楽しめる。1人の作曲家の楽曲を集めたソングブック形式の作品として、 本盤は出色の出来なのではないだろうか? ブックレットには武満さんからの謝辞が記されているが、 ご本人からのラヴコールで実現したコラボレーションらしく、 メロディとヴォーカルの相性は抜群だ。 ただし、制作に武満さんは参加されていないため、 服部隆之、コシミハル、羽田健太郎、佐藤允彦ら、 アレンジャー諸氏の仕事ぶりも大いに光っている。 また、職業作詞家をほとんど起用していないことも、 本盤の楽曲を商業音楽からやや遠い所で鳴り響かせるのに 一役買っているように思う。 駄曲は1曲もないのだが、あえて好みの曲を挙げてみよう。 ゆったりと大きなメロディが心に優しい01.,
02., まさに天上の音楽のように気高く美しいバラッド 05., 谷川俊太郎さんのリリックと羽田健太郎さんのピアノが 大らかなメロディを彩るような08., 「~ぜ」という口調が続く武満さんのリリックが楽しい09., など、名曲多し。 折にふれて楽しみたい、奥の深いアルバムだ。
03.
作曲家の巨星、武満徹氏が亡くなって間もなく10年が経とうとしています。昨今の世界中の政情不安を示すニュースが跳梁跋扈する中、ふと頭の中を「死んだ男の残したものは」の歌詞(詩:谷川俊太郎氏)が頭をよぎった時に、久しぶりに聴いてみたくなった1枚です。
時が経っても色褪せることのないアルバムですね。石川セリの味わい深い歌声、アレンジャーたちが原曲のシンプルなメロディーに新しい生命を宿し,バックのミュージシャンたちがさらにその霊感を昇華させています。
かの天才モーツァルトも、音楽にとって一番大切なものはメロディーであると説いていますし、武満徹氏自身も、「日頃難しい音楽ばかり作っているから、歌ものくらいはメロディーを大切にしたい」という趣旨の内容を、このアルバムに収録されている「翼」がエンディングテーマで使われていたニュース番組のインタビュー中に述べておられます。
特に心を打つのは「小さな空」「翼」「死んだ男の残したものは」「三月のうた」「見えないこども」でしょうか。とにかく心の奥底の,日頃は強がって、強がって、決して相対する人には見せたくない部分に容赦なく滲み込んできます。
このアルバムはホンモノです。ぜひ心が素直になることのできる、一人きりの夜などに聴いてみて下さい。
04.
☆☆☆☆☆ ☆武満さんが気に入っただけのことはある、石川セリの 《うた》。 きめ細かく、美しいアレンジで 石川セリが、深く、軽やかに歌っています。 ☆「八月の濡れた砂」から「野の花は野の花」に広がった 最初のアルバム『パセリと野の花』の衝撃から 成長した 「遠い海の記憶」@【つぶやき岩の秘密】。 その石川セリが、さらに円熟味を加えて このアルバムに結実しました。 ☆聴くことで、心が揺さぶられたり、ちょいと豊かになったり…… オススメです!!
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